フッ素の作用って、フライパンのフッ素加工みたいなものですか?

こんにちは。三軒茶屋のふじわら歯科医院です。お子さんの歯に塗る虫歯予防のフッ素、実は表面コーティングとは全くの別物です。フッ素がミネラルイオンと結晶を作り歯の一部となって修復してくれます。この再石灰化のスピードが速いので歯の修復がスピーディに進みます。
「フッ素を使う」と聞くと「歯の表面をコーティングするのかな?」と思うかもしれませんね。でもフッ素の歯への作用はこれとは全く別物。とても不思議なことですが、カルシウムイオンやリン酸イオンといっしょに歯の結晶(フルオロアパタイト)を作り、歯そのものとなって脱灰を修復するのです。しかもその働きがとてもスピーディです。
 歯磨き後、口の中に残った微量のフッ素は、歯の表面や唾液に溜るだけでなく、プラーク(細菌のかたまり)にもシッカリ染み込みます。プラークは虫歯や歯周病を引き起こす諸悪の根源。きれいにみがいたつもりでも、取りにくい歯の溝や歯間などに残りがちです。フッ素はこれを逆手に取り、取り残しのプラークをフッ素の貯蔵庫として利用するのです。してやったりです。
 このフッ素の働きを実験室で細かく調べているうちに、おもしろいことがわかってきました。どうやらフッ素は、唾液が酸性のときもセッセと働くらしいのです。
 カルシウムイオンとリン酸イオンを入れたPH4.3(オレンジジュースとトマトジュースの中間くらいの酸性度)の液体のなかに、1ppm(0.0001%)のフッ素を加え、3日間脱灰実験を行ってみました。すると歯はまったく溶けていなかった。カルシウムイオンとリン酸イオンを引き連れたフッ素が、脱灰量に相当する分の結晶を作り、歯に沈着してくれたのでしょう。
 本来、酸性のなかでは歯は溶ける一方。しかしフッ素があれば酸性下でも再石灰化が進み、脱灰と再石灰化の平衡状態を保つことができる。とても頼もしい働きです。
 さらに特筆すべきは、こうして歯に沈着した結晶(フルオロアパタイト)がふたたび脱灰し唾液のなかに溶けるときには、フッ素がイオン化し放出されるということです。つまり歯自体がフッ素の貯蔵庫でもあるわけです。長期間使えば使うほど虫歯予防効果が複利で増えるのは、こうしたことが関係しているのです。
 子供のときに3ヶ月に一度、フッ素塗布を繰り返し行っていれば、かなり長期間(つまりはその歯がなくなるまで)、虫歯にならない。
科学的にも証明されています。歯科医院で行うフッ素塗布は適量をコントロールしていますので、安心安全で、とても効果的に虫歯予防が長期的に期待できると言って良いでしょう。