入れ歯安定剤、どう使う?

三軒茶屋のふじわら歯科医院です。今回は入れ歯安定剤について考えてみたいと思います。
入れ歯安定剤については、歯科で長い間、「なるべく使わないようにしてくださいね」とお願いすることが多かったと思います。というのも、よく調整された適合する入れ歯であれば、「入れ歯安定剤は基本的に必要ない」というのが、本来の考え方だからです。また、入れ歯安定剤は、使い方によっては、歯と入れ歯の適合を悪化させてしまうことがあります。こうした事情から、歯科医師は入れ歯安定剤の使用についてあまり評価してこなかったのです。
ところが、現在国内で販売されている入れ歯安定剤の市場規模は120億円以上。超高齢化社会になり、この規模はさらに拡大の一途を辿っていると言われています。大変多くの方が、入れ歯の使い心地を良くするために安定剤を使っておられるのが現状です。こうした中、入れ歯安定剤の使用を全面的に「だめ」と患者さんにお願いすることは、確かに正論である一方、実態にそぐわなくなってきました。また、入れ歯安定剤の機能についての研究が進み、近年では入れ歯安定剤も、うまく選んで活用すれば、入れ歯の使い心地の改善に役立つ安全な補助材料であるという評価がされるようになりました。
ただし、がたついて合わない入れ歯を直さずに、入れ歯安定剤でごまかしながら使い続けていると、その入れ歯が抱えている問題は解決しません。それに、入れ歯安定剤が問題を隠してしまい、時には新しい入れ歯を作ることさえ難しい難症例を生んでしまうことさえあります。
入れ歯安定剤は、こうしたマイナス面も踏まえたうえで賢く使うことが重要で、もっとも注意していただきたいのが「選び方」と「使い方」です。入れ歯安定剤は一般的には、パウダータイプ、クリームタイプ、クッションタイプがありますが、おすすめなのが薄くつけやすいパウダータイプかクリームタイプです。この2タイプでしたら、かみ合わせを悪くすることなく、安心してお使いいただけます。
「ボリュームのあるクッションタイプを使わないと入れ歯が合わない」という場合は、よほど部分入れ歯が歯や顎の骨と適合していないと考えられます。まずは歯科医院で調整や修理を受けてください。
クッションタイプは、厚みがあるクッション効果が人気なのですが、使っているうちに噛み合わせが変わりやすく、入れ歯がさらに適合しなくなってしまいやすいのです。また、時間が経つと、固くこびりついて取れにくいので
不衛生になりやすい面もあります。
入れ歯安定剤のために問題が拡大しないよう、使うに当たっては、入れ歯安定剤のパウダータイプかクリームタイプを選び、はじめは薄くつけて使ってみましょう。使うと入れ歯はベタベタになって掃除がしにくいですが、毎日寝る前には綺麗に落として、清潔に保つようにしてください。
また、定期的に歯科医院で調整してもらい、入れ歯を快適に使い続けられるよう、残った歯の健康や噛み合わせを大切に維持していきましょう。